はじめに(プロカメラマンになりたい地方カメラマンの現状)
最近、仙台という地方都市でも若くてフットワークの軽いカメラマンや、主婦カメラマンが増えてきました。カメラの使い方や写真の撮り方講座のような形で学んだ人達だと思います。
彼らが主軸としてるのが、SNS写真や屋外での家族写真、ちょっとしたストロボを使用したプロフィール写真だといいます。そんなカメラマン達と実際に会うと必ず聞かれるのが「どうしたら本当のプロカメラマンになれますか?」という質問です。
彼らが何を言いたいかというと、ストロボを使ったスタジオライティングをちゃんと学んできていないのと、企業のコマーシャル写真や雑誌の撮影、ブツ撮りの現場を踏んできていないために、商業的な写真が撮影できずどうしていいか分からないという点です。
例えば「新しく出来た温泉旅館」の大規模な撮影の場合、撮影するのは以下の項目です。
・外観から内観、部屋の全て
・人物撮影
・料理の集合撮影
・温泉のイメージ撮影
それだけではありません。撮影する順番のディレクションなどなかなかの経験も必要です。なぜなら地方都市だとディレクションできる制作会社がほとんどありません。つまりカメラマンがディレクションもしつつ進めるスタイルになってしまいます。未経験のカメラマンではおそらく無理でしょう。
つまり、地方都市で活躍できる「プロカメラマン」とは、最低限必要な技術と経験があり、クライアントが求めるクオリティの写真を専門的な機材や技術を使い、ディレクションも行えるカメラマンのことです。
この記事があるカテゴリ「プロカメラマンになる方法」では、そんな地方ならではの若いカメラマン達の道標になるような記事をシリーズで書いていけたらと思っています。
カメラの性能は良くなっても、地方では技術と経験を積む場所がない
東京以外の地方都市では、カメラマン人口は圧倒的に少なく、カメラマン志望の人たちが学べる場所はなかなかありません。なぜならプロカメラマンを必要とする媒体自体が圧倒的に少ないからです。媒体はすべて東京に集中しています。地方でプロカメラマンとして活躍したい場合、東京で学んでから地方に戻ることが最も近道なのは今も昔も変わっていない気がします。
私は今、仙台という地方都市でプロカメラマンとして活動していますが、大規模な撮影の場合は優秀なアシスタントの方々と一緒に仕事をしています。彼らも東京で技術と経験を積んだプロのカメラマンです。撮影の進め方からライティングの組み方をほぼ指示しなくてもできるレベル。
これがストロボのセッティングやライティングを一から説明しないといけないアシスタントだと仕事になりません。そんな人材は東京なら山ほどいますが仙台ではなかなか見つからないのが現状です。なので彼らの事はパートナーとして大切にしています。
地方都市でプロカメラマンになるために必要な3つのスキル
地方都市でプロカメラマンになるために必要な3つのスキル(テクニカルスキル、コミュニケーションスキル、ビジネススキル)について簡単に紹介します。テクニカルスキルは撮影技術やカメラの設定、光の扱い方など、撮影に必要な技術や知識。コミュニケーションスキルは、クライアントとのコミュニケーション能力。ビジネススキルは、自分のビジネスを運営するための知識です。それぞれのスキルについて初心者でも理解しやすいように、丁寧に説明していきます。
テクニカルスキル
プロカメラマンにとって、テクニカルスキルは最も重要なスキルの1つ。テクニカルスキルには、以下のようなものがあります。
- カメラの使い方:シャッタースピード、ISO、絞りなどの基本的なカメラの使い方を理解していることが必要です。
- ライティング:光の使い方に関する知識で、自然光や大型ストロボを使ったライティング、HMIやLEDライトでのライティング方法を熟知していることが求められます。
- 編集:写真はレタッチ技術に関する知識も必要です。PhotoshopやLightroomなどの編集ソフトの使い方をマスターしていること、それらのソフトとカメラを連携させ撮影を進める経験が必要です。
コミュニケーションスキル
プロカメラマンにとって、コミュニケーションスキルも非常に重要です。コミュニケーションスキルには、以下のような種類があります。
- クライアントとのコミュニケーション:クライアントが求める写真を撮影するためにはどんなスタジオで撮影するか、何人のスタッフが必要か、どんな機材が必要かを加味しながら予算に合わせた内容を詰めていきます。
- チーム内でのコミュニケーション:アシスタント、スタイリスト、ヘアメイクなど共に撮影するチーム内でのコミュニケーションがスムーズに行えることが重要です。
- 撮影時のモデルとのコミュニケーション:モデルとのコミュニケーションがスムーズに行えることも重要です。表情を引き出す現場づくり、会話、撮影スタイルなど経験が求められます。
ビジネススキル
地方都市のプロカメラマンにとって、ビジネススキルも重要なスキルの1つです。ビジネススキルには、以下のようなものがあります。
- マーケティング:自分自身や自分の作品をマーケティングするための戦略を立て、実行することが求められます。
- チームづくり:アシスタント、スタイリスト、ヘアメイク、モデル事務所、貸しスタジオなど外部スタッフとのチームづくりを日頃から強めておくことが重要です。
- 契約の交渉:クライアントとの契約交渉がスムーズに行えることが重要です。地方都市の場合、ギャラの交渉がひとつのネックです。またギャラ以外にも次の撮影依頼につながる方法を常に模索することが大切だと思います。
私がプロカメラマンになるまでの道のり
参考までに、私がプロカメラマンになるまでのプロセスを紹介します。私がプロカメラマンを目指して東京へ上京したのが23歳の時。プロカメラマンとしてなんとか独立できたのが4年後です。なので舞台はもちろん東京での話です。地方都市だとこのプロセスは成立しないかもしれません。
スタジオアシスタント(約1年)
スタジオアシスタントとは「貸しスタジオ」に常駐しているアシスタントのことです。都内にはあらゆる場所にこの貸スタがあります。タレントや撮影クルーが集まり撮影をする専用スタジオがあったり、車の撮影専門のスタジオがあったり様々です。アシスタントの役割は雑用。カメラマンから事前に受けた指示通りに機材をセットしておいたり片付けたり。その繰り返しですが、最も勉強になるのがスタジオライティングやカメラマンの撮影スタイルです。カメラマンごとに全く違うため本当に勉強になりました。ここでスタジオでしかできない大掛かりなライティングなどを学びます。
ちなみにスタジオアシスタントはほとんどの人が1〜3年以内に次のステップに進みます。卒業後にそのプロカメラマンに就くか、どんなジャンルに進むかを考える時間でもあります。
カメラアシスタント(約2〜3年)
次のステップはカメラアシスタントです。いわゆる「師匠に就く」という意味ですが、だれか憧れのカメラマンに就く人もいれば、様々な撮影を経験したいという理由でフリーで活動する人もいます。
私はメインでタレントを撮影するカメラマンに従事していましたが、それだけでなくファッションや物撮り、サブカルチャー雑誌が得意なカメラマンなど本当に様々な人達のアシストを経験しました。お陰で独立後もジャンルを問わず撮影ができるようになりました。
ちなみに撮影専門の制作会社に就職する道もあります。フリーのプロカメラマンを目指すのではなく、いわゆる「社カメ」というサラリーマンカメラマンになる選択をする人もいます。メリットは自分で営業する必要もなく、与えられた撮影をこなしていく安心感があるからです。
プロカメラマンとして独立
プロカメラマンとして独立するということに、特に宣言はありません。強いて言えば、ご飯を食べるためのアシスタントをきっぱり辞めて、食えなくても写真撮影だけで生きていく選択をするということです。
実際に撮影だけで食べていけるほど甘くないのも現状ですが、ひとつの登竜門かもしれません。やりたくないジャンルや不得意なジャンルの撮影もこなし、自分の下手さや技術のなさを痛感しながら少しづつ成長できるのがこの時代です。結局は経験がものを言う世界なのは、間違いありません。