HASSELBLAD 500シリーズ用レンズで最も代表的なのがプラナーC 80mm F2.8。焦点距離は35mm換算で44mm。スナップにもポートレートにも使える標準レンズだけにどうしても揃えたい王道レンズです。
ちなみにフィルム時代のハッセルレンズは大きく分けて「Cタイプ・CFタイプ・CFEタイプ」の3つに分かれるようです。違いについてはいつか記事で詳しく記載します。
プラナーC 80mm F2.8 レンズデータ(黒鏡胴)
Planar(プラナー)の由来はドイツ語で「平坦な=Plan(プラーン)」から名付けられたと言わています。1896年にパウル・ルドルフ博士の設計により誕生しました。以下は私が所有している黒鏡胴のマルチコートレンズのデータです。
名称 | Planar(プラナー) C 80mm f2.8(黒鏡胴) |
コーティング | T*コーティング(マルチコート) |
レンズ構成 | 7枚 |
絞り範囲 | F2.8 - F22 |
フィルター径 | 50mm |
最短撮影距離 | 90cm |
焦点距離 | 44mm(35mm換算) |
一度使ってみると分かりますが、最短距離が90cmなので意外と寄れません(接写できない)。そんな時はエクステンションチューブではなくプロクサーというクローズアップフィルターが手軽でラクです。これは後から気づいたこと。
エクステンションチューブも保有していますが、レンズ交換と同じ作業が必要なためほとんど使用していません。なにしろハッセルのレンズ交換は、ボーッとしてるとシャッターをチャージせずレンズを外してしまいそうになり、故障の原因になりかねません。
プラナーC 80mm F2.8の種類
どうやらプラナーC 80mm F2.8にはコーティング違いで3つの種類があるようです。コーティングはシングル・モノ・マルチと時代によって違います。
初期のシングルコートとモノコートレンズは銀鏡胴(シルバー)のみの生産。後期のマルチコートには黒鏡胴(ブラック)と銀鏡胴(シルバー)の両方が生産されていてシルバーは希少のよう。上記は私が所有しているの黒鏡胴のCレンズ。
上記のように黒鏡銅レンズには「T*コーティング(マルチコート)」がされていて、赤文字でT*が刻印されています。以降発売されたハッセルレンズにも同じようにT*コーティングが。もちろんMADE IN GERMANY(ドイツ製)の刻印もレンズ横に刻印されています。
Cレンズの使い方|ライトバリューシステムとは
Cレンズの場合、ライトバリューシステムが採用されていて、絞りとシャッタースピードが連動で動きます。同じ露出で撮影できる工夫のようですが、例えば上記のように、F2.8・1/500に設定し、F4に動かすとシャッタースピードも同時に動いて1/250になります。つまり個別に動かず連動するタイプ。これはCレンズ特有で、この後のCFレンズ以降からは個別に設定できるようになっています。
これを解除するには上の写真のようにギザギザのレバーを押しながらシャッタースピードダイヤルを動かすだけ。面倒な作業ではないので撮影時も気にならない程度。
絞り込みはこのボタンをカチッと押します。用途は「ボケ具合・被写界深度」を確認するときに使用します。絞りを開放まで戻すとボタンが自動で解除されます。
Cレンズの使い方|ストロボ使用時の設定
Cレンズで外部ストロボを使用する場合は、切り替えレバーを押しながら「 X 」の位置にします。ハッセルレンズはレンズシャッターなので全てのシャッター速度に同調。ちなみにコードを繋げないといけないので、そこは工夫が必要です。方法はいずれ掲載します。
ちなみにVXMのそれぞれの意味は以下。
- V:セルフタイマー
- X:ストロボシンクロ用
- M:フラッシュバルブ用 ※フラッシュバルブ(閃光電球)は現在製造されていないので使わない
プラナーC 80mm F2.8を使用した感想
現在使用しているハッセルプラナーC80mm F2.8のセッティング。501C(1994~1997製造)にCFXⅡ50C(5000万画素のデジタルバック)をつけて撮影しています。80mmはコンパクトで軽く、手持ちでも撮影できるバランスがいい。
Cレンズは、なんといっても時代を感じるクラシックな見た目がたまらない。その分古いレンズになるため、私の持っているプラナーはレンズ焼け(硝材の表面にできた酸化皮膜のこと)が少々目立ってきています。
レンズ焼けしていると、撮影した写真は多少イエローがかる感じです。ハッセルらしいしっとりとした写りのプラナーだけに、これもこれで非常にいい味として出てくると思って使用してます。モノクロ現像したい方は全く問題ありません。なんといってもハッセルレンズの魅力はモノクロにあるし、これがまたなんとも色っぽい質感が出るんです。
上記がハッセルの5000万画素デジタルバック「CFVⅡ50C」。フィルムマガジンと見た目も変わりません。
Planar C80mm F2.8 作例
スタジオにあるモルテックスのテーブルを撮影した一枚。このしっとり感がハッセルレンズの魅力。RAWデータで撮影しているので、白飛びは修正できますが、あえてハイライトは飛び気味に現像。
雑然としたスタジオの打ち合わせテーブルを撮影。少し絞るとシャープさが一気に出てくるのもハッセルレンズの魅力。その時の時間と空気感まで写ってしまう。
Kartellのスケルトン花瓶を通過する光がいつもキレイです。撮って出し。レンズ焼けのせいか、少しだけイエローがかっている感じ。
直射日光が当たったスタジオの塗り壁。何げないシーンもいい。撮って出し。
コンクリート床に直射日光がばっちり当たっている時間帯に撮影。RAWデータでハイライトを少し落としただけでほぼ撮って出し写真。なんだろう、このしっとり感は。
スタジオの機材棚を撮影。ハッセルはモノクロにすると、情緒的でうっとりする写真になる。私はいつもモノクロはアンダーめに現像。ハッセルレンズには時間の空気感を写す魅力がありますね。ぜひ試してみてほしいです。
自然光の中、絞り解放で撮影した一枚(レタッチは彩度のみ)。ディフューズされた柔らかい光だとハッセルレンズのなめらかさがさらに際立つ。
余談ですがハッセルを使うようになってから、デジタルプリントが楽しくて仕方ありません。紙もいろいろと試してますが、ILFORD(イルフォード)の紙が意外と手頃で質感もいい。
イルフォードといえば印画紙。それを彷彿とさせるデザインもいいですね。印画紙に焼き付けている気分になるんです。これは安くてオススメです。
ちなみにプリンターはCanonのPROG1がキレイです。中判カメラを買ったら、G1などのフラッグシップなフォトプリンターでプリントしてみてほしい。ぜんぜん違います。他人にあげたくなるクオリティです。